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アルビューメンプリントを家で作る、その片鱗を。

こちらにもボチボチと作品を載せていますが、先月から念願叶って家でアルビューメンプリントを作り始めました。この状況をいつまで保てるのか。出来るうちに真剣に取り組む所存です。

 
さて、アルビューメンプリント、今では知名度は低いと思います。
19世紀半ばから20世紀初頭に人気のあった写真プリント技法で、シルバーの反応にアルビューメン(卵白)を組み合わせた技法です。以前に、ご挨拶をかねて少しだけ紹介しました。

354x5andwords.hatenablog.com

 

 
全容は無理でも、興味ある方に少しでも概要をお届けしたいと思います。
ここでは、実際、作るために何をしているのか。どんなことが起こって写真となるのかなどの片鱗を、私の行っている範囲でご紹介しようと思います。
 

紙の上で何か起こっているのか:化学反応について

いわゆる白黒写真は、今やゼラチンシルバープリントを指すことがほとんどだと思います。実はそれ以外にもいくつかの技法があり、それぞれ銀や鉄やプラチナなどの金属を利用します。アルビューメンプリントはそのひとつで銀を利用します。
 
わかりやすく説明できたら良いのですが、能力がないのですみません。
大雑把に言うと、塩化銀等、ハロゲン化銀が、光を当てられると光エネルギーでハロゲンから切り離されて銀粒子となる性質を利用します。紙上(プリント)でこの銀粒子が多い部分は黒が濃くなります。
 
例えば、ネガからポジを作ることで言うと、プリントで黒い部分はこういうことです:
ネガは明暗が逆である。
ネガの明るい(薄い)場所は光をよく通から、プリント上で、そこに該当する部分には光がたくさん当たる=エネルギーをいっぱいもらって銀粒子がたくさんできる=黒くなる。(逆にネガの黒いところは光を通しにくいので、印画紙の上では銀粒子がほとんど生成されずに白くなる)。
 
さて、紙の上のハロゲン化銀が光による反応を次々に起こすためには、たっぷりのハロゲン化銀の材料が周りにある必要があります。
このことを具体的に見るため、ここで、まず中学?高校?の化学レベルの、基本となる反応式を載せます。
 
NaCl+ AgNO3 ; NaNO3 + AgCl4
Sodium chloride and Silver nitrate produce sodium nitrate and silver chloride.
式は、食塩(塩化ナトリウムNaCl)と硝酸銀(AgNO3)が混ざると、硝酸ナトリウム(NaNO3)とハロゲン化銀(塩化銀AgCl4)ができることを表します。
ハロゲン化銀(AgCl4)の一部が光に反応すると、切り離されたハロゲンがAgNO3と反応し、新たなハロゲン化銀を生成します。これがまた光と反応します。
しっかりしたイメージを形成させるには、紙の上にAgCl4だけでなく、その原料であるNaCl+ AgNO3が十分にある必要があります。
 
原理的には上記の反応式だけで写真イメージを得ることができるのですが、反応速度を速め、イメージをより豊かにするためにゼラチンやアルビューメン(卵白)で紙に被膜を作ります。
 
そして露光が終わればその状態でストップさせるため、余った物質を紙から素早く除去します。
 
さて、これから実際の作業の片鱗を述べます。
 

0 プリント等倍のネガを用意する。

まずはネガが必要ですね。アルビューメンプリントは感光性が低いので、印画紙にフィルムを密着させて露光させます。よってネガの大きさがそのままイメージサイズとなります。私は4x5(インチ)のフィルムカメラを使って撮影、現像しネガを作っています。この作業は貸し暗室で行っています。アルビューメンプリントには濃いめでコントラストの強いネガが基本的に綺麗な結果ができます。
 
 
 

1 感光紙を作るための材料:

1 卵液(卵白、塩、アシッド、水)
卵の白身をより分けて使います。卵はやや古めがベスト。それをよく撹拌して均一の液状にし、液を落ち着かせるために1日寝かせます。 この時、なるべくメレンゲを立てないのが良いです(卵液が減ってしまうため)。 翌日、メレンゲを取り除いてガーゼで漉し、液の分量を量り、適した量の塩、アシッド(酢)、水を加えてよく撹拌して、2日〜寝かせます。それを再びガーゼで漉したらできあがり。
これは密封して冷蔵庫に入れれば数ヶ月保存できます。
 
アミノ酸、とかタンパク質とか工業的に作れる物質ではなく、卵白やゼラチンという自然物に含まれる微量の物質の働きが重要で、未だにそれが何か分かっていないのでそれらが使われているのが面白いところです。
 
2 硝酸銀水溶液
これは粉末を蒸留水に溶いて作ります。
 
3 紙
紙によって、液の吸い込み方や反応や表情が全く違ってきますので中性紙をいろいろ試してみましょう。別エントリーで、同じネガと違う紙で作ったイメージを載せます。
 
 

2 感光紙を作る作業:

1 紙を切る。
刃物は使わずに定規を当ててちぎります。(刃物で繊維を断ち切ると水の中で破れやすくなる)
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切ったら紙の表裏を間違えないように一枚一枚に印をつけましょう。(表裏分かりにくい紙は特に)
 
 
2 表側に卵液を塗る。
一番、失敗のないのは紙を箱型に折り、卵液の上に舟のように2〜3分浮かべるフローティングという方法ですが、私は刷毛を使っています。
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使う紙が薄いと裏に染みて、そこから何かを吸収してプリントがダメになることがあるので、私は紙をフレームに貼って宙に浮かしています。
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紙によって吸水の仕方は様々。卵液溜まりができないように注意(何枚もしくじりました)。
これを洗濯バサミで吊るして完全に乾かします。
 
↑ここまでは自然光でもOK。
↓以下は紫外線を含む光はNG。
 
 
3 紙に感光性を持たせる
  2の紙に硝酸銀水溶液を塗布します。ここから紙に感光性が備わるので(卵液の塩と硝酸銀で)、紫外線の当たらない場所で作業します。紙を箱状に折って2〜3分、舟のように液に浮かべる方法が一番確実です。これを吊るして完全に乾かします。
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私はトイレで作業をしているので、扉の開け閉めがあるために囲いを作りました。
 
*↑水道水の中のミネラルが硝酸銀と反応してしまうので、卵液作りからここまで、水は全て蒸留水を用います。
 
 

4 露光

紙とネガを密着させるために、露光の際にはガラスフレームを使います。
ガラスにネガ、紙の順で載せます。(ネガの乳剤面と紙の表を合わせます。)蓋をして光(私は太陽光)に当てます。
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1 テストピース作り 
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必要な露光時間を求めるため、ガラスの上からイメージを黒紙で覆って、一定時間ごと黒紙の位置をずらし、露光時間を何段階か作ります。
私は東南東の小窓の下で、曇っている日で20分、40。60、80、100分くらいの段階を作ります。
 
露光が終われば紙を以下のプロセスで洗って乾かして、イメージの様子を確認し、本番の大凡の露光時間を決めます。
太陽光の場合は時間帯や天気、雲の動きで状況が変わるので大凡の目安ですが。
 
本番露光
1のテストピースの結果に基づいて露光します。
紫外線の量は刻々と変わるのでテストピースと同じ時間で同じ光量を受けている訳ではありません。裏蓋を開けてイメージの濃さを確認します。(フレームの後ろは半分づつ開くようになっていて、半分開けてもネガと紙がずれない仕組みになっています)
洗って乾かすと色がかなり薄くなるので、勘を働かせます。
 
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5 洗浄

 
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塩水→水→チオ硫酸ナトリウム→水ですすいで、余分な物質を紙から除去します。
このプロセスも紙の種類や厚さで変わります。
 

6 乾かす

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乾くと卵白を塗ったところが引っ張られてシワになるので、フラットニングが必要です。
私は濡れた状態でガラス板に貼り付け、少し置いてから、小麦で作った糊を紙の四隅に差し入れて、緩く口を開けたビニールに入れたまま、ゆっくり乾燥させます。(急に乾燥すると破れることがあるため)
 
乾いたら、紙とガラスの間に薄く削った爪楊枝を差し込んで隙間を作り、そこにしっかりした紙を差し込んで剥がしています。
 
ちなみに小麦糊は小麦粉小匙1を水60〜70ccに溶いて小鍋でゆっくり火にかけて、モッタリしたら冷ますという方法で作ってみましたが、また改良するかも知れませんし、米糊のような作品保存性があるのか、確かめないと不安も残ります。
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基本的な方法が網羅されている本を、ネットで見られます。
19世紀の内容がベースで、紙もコットンが基本とされているので、自分が使う紙でいろいろ試行錯誤が必要になってきますが、とても助かります。参考にリンクを。
 
長くなったのでいろいろラフに流してしまいましたが、また書くことがあるかもしれません。