11-05 2016: T or C - Hillsborogh - San Lorenzo - ニューメキシコ②
(その①の続き)
翌日は幸いにして晴れた。
今回、ひょんなことから知人の紹介で人を訪ねることになり、それを中心とした旅程を組んでいた。
Googleマップで見た時、GPSが使えないことは予想できた。しかし予想以上の僻地であった。
メールでは出発時に十分にガソリンを補給してくるようにと指示があった。
ホテルを出てガソリンを補給する。昼時にはずいぶんと早かったが、道中に何も無くなるので、途中Hillsboroghという小さな町の食堂で腹を拵える。
西部劇に出てきそうな古い町だ。恐らく昔は鉱山発掘で賑わっていただろう。その後廃れたゴーストタウンが、ニューメキシコには幾つも有る。
目抜通りに建つ食堂は1872年の建造物で、70年以上のあいだ商店、郵便局、電話交換所、ショーステージも兼ねたとあり、店内には当時の対面式販売の面影をそのまま残すショーケース等がうまい具合に活かされている。
食堂は土曜の朝だったこともあり混んでいる。
旦那さんが作り、奥さんがてきぱきとサービスしている。
年配の細身の奥さんは、客が去るとテーブルにアルコールを吹き掛けて塩胡椒の瓶まで手早く拭きあげる。
料理は一から作るので時間がかかるが、急ぐかと確認があった。
料理が出てきたのはかれこれ1時間後で、ちょうど昼時となった。
カトラリーはピカピカに磨き上げられており、素材はとても新鮮で、料理は誠実であった。
思ったより時間を取ったので、食べた後はすぐに出発した。
車に乗る前、そのまま町を去るのが心残りで、素早く写真を撮る。
店の前の郵便局。
店の前の目抜き通り。
カントリーやロックが聞こえていた。週末の音楽同好会の練習っぽい。
目抜通りは1分ほどで町外れ。すでにこんな感じ。
その後間もなく山に入り、走り屋の歓喜しそうなくねくね山道がひたすら続く。
少し先にKingstoneという名のゴーストタウンが現れるはずだが、現れない。
1本道のはずだが、どこかに岐路でもあったっけか。
行く前にGPSで確認した時間はとうに過ぎている。山に入ってからかれこれ1時間以上道標を見ない。
いったいどの辺を走っているのか。町から出た時に道を取り違えたか。
遠くに建物や幾つかの道が見え始めた。道標も現れた。合っている。
手描きで用意した地図を見ながら慎重に道を取る。
再びの勾配。ガタガタと丘陵を登り、ついに道端に人家の表札らしきポールを発見。
訪ねる人の番地と名前だった。
昨日の雨が続いていたらここまで辿り着かなかっただろう。お天気よ、ありがとう。
車を停めて外に出る。
表札の向こうを確認すると、岩が無造作にボコボコと突き出した細く険しい坂道が続いている。
普通の車では入れないから電話をくれと言われていた。確かに、無理だ。
だが再起動させたアイフォンはノーシグナルを示したままだ。車に乗り直して高所に移動するが、状況に変化なし。
もう一度、表札の前に戻る。
よく見れば、遥かな山の麓の谷底に、その家らしき建物がある。
叫べば聞こえるかも知れない。
必死で叫ぶ。私は肺活量が大きく、叫ぶと強大な声が出る。
しばらくすると、家から人が出てきた様子が感じ取れたので、追い打ちで叫ぶ。
遂に敷地に止まっていた車が動き出した。
ここまで必死だったので、写真はない。
長くなったので、次に続く。