08. 03 2017. R.I.P
数日前、雁皮紙を割いた。
越前の、今は存在しない工房のものだ。
柔らかな光沢と滑らかな肌理を持つ生成色。
もう、手に入らないかも知れない。
この美しい紙を大量に無駄にしていることに、心がチクチクと痛む。
一枚たりとも無駄にしたくない。
なのに、無駄にする。
なんたることよ。
その夜中、近親者が亡くなったと連絡があった。
翌朝、相方が日本に発った。
大好きだった人で、知らせを聞いた時はショックだったが、
異国にいるためか、実感が湧かない。
来月帰国したら、現実の不在を感じるのだろう。
夜になるとその人のことがいろいろと思い返される。
不思議な感覚である。
僅かの手がかりからその人の人生を勝手に思い描き、
静けさの中でそれを感じている。
音は不要だ。
漬物石のように重い静けさが良い。
だから誰とも話す必要はない。
日に日に重さを増せば良い。
その人から、どれだけの力と温もりを貰ったか分からない。
私の制作物をいつも楽しみにしてくれていた。
真心と身の力を込めて、作り、同じ力で、生きよう。
目指すは、脱ポンコツ。
上からひょいと覗き見てくれた時に、愉快で爽快で痛快な見世物となることを祈って。