2018ー9月:メイン州の港前と内陸部に人を訪ねて❹(最終こぼれ話)
旅のこぼれネタ。
夕方、Bの家で小さな生き物がジャンプして家の中を駆けて行くのを見た。
サイズからきっと赤リス。
北米ではたくさんリスを見かけるが、中でも赤リスは小悪魔的な魅力を持っている。
木の上にいるのをじっと見つめれば、向こうもにゅーっと首を伸ばして見返してくる。ソローの本にも同じような描写がある。好奇心の強い種族なんだろう。
夕食に出掛ける前に、軽い気持ちでBにそのことを言うと、「そいつはまずい。悪いけど、家の中を探してみるので待ってくれるか。」と真剣に家の中を探し始めた。
聞けば、電気コード、衣類、壁、なんでも齧ってしまうらしい。
結局、罠を仕掛けて様子をみることになった。餌はピーナツバターを付けたトルティーヤチップ1枚。
ピーナツバターが大好物らしい。
早朝4時くらいだろうか、階下で微かな物音がするのに気が付き、眠れないのでそのまま起きることにして階下に降りた。
罠がガタガタ揺れている。
果たして、そこには赤りすが掛かっていた!
怖がらせては可哀想と居間に移ったが、しばらくして音が止んだ。無駄なことを悟って、体力を温存しているのだろう。
夜が白んできたので、もう一度様子を見に行った。
じっとしている。
間近で見るとあまりにも可愛いので堪らず1枚撮らせてもらった。
背後にトルティーヤチップを見ると、ピーナツバターはちゃんと舐めきっていた。
そして間も無く、きゅっきゅっきゅ、とか細い声で哀願するように鳴き始めた。思わず心を動かされそうになったが、心を鬼にしてその場を離れた。
それにしても、知らぬ者の情に訴えかける高度な技には驚いた。
その後、Bが朝飯前に「可哀想だけど」と遠くへ彼女を放しに行った。
近くに放すと戻って来るそうだ。
捕物帳はこれで終わり。
さて、Bはやや早めに仕事を引退した(変わり者の)イギリス人でその庭は美しい。綺麗とは言えない家の中に散らばる物に(毒と)味があり、私は密かにその品々を鑑賞するのを楽しみにしている。
いくつか当たり障りの無い箇所を。
二つの1人用肘掛け椅子に置かれたクッション。
脇のテーブルには赤く塗られたムースの顎の骨と角。ちなみにBは多神教を自負する自然崇拝者である。
カードゲーム。6セット入り。
デッキを見下ろす窓辺。
家の中にいくつものガーデンノーム(庭用の陶器の小人の人形)が散らばっているので、たぶん好きなのだと思うが、確かめたことはない。そしてそれらは全部家の中にいる。あと、アフリカや東南アジアの仮面もあちらこちらに散らばっている。
Bと別れ、空港に向かう途中で、初日にシャツを買ったフリーポートにもう一度寄って夏用のアウトドアシャツを1枚買い足し(相方、ありがとう!)、空港のあるポートランドの港で早めの夕食。
ロブスターの食べ納め。
チャウダーの有名な店。だが、「シーフードチリ」を頼んだ。
チリビーンズの上に、海老、白身魚、蟹、ロブスター、クラムを蒸したものとチーズが載っていて、スパイスの効いたカレーを思わせるチリに良くあった。意外。やってみたい。
夜の飛行機は遅れたが、欠航便も出る中だったので飛んだだけで幸い。
とてもよい経験をさせていただいた、素晴らしい旅だった。
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