帰国の記録 ⑧ 10月2、3日 徳島 (宇陀紙)
10月2日快晴
相方東京へ戻る。私は駅前で電動アシスト自転車を借りて、知人のスタジオ移転祝いへ。予定していた汽車での遠出は、脚の調子が悪く翌日に回す。無理しない。
今回の徳島は静養旅行と割り切った。
10月3日晴れ、午後曇り
脚の具合はずいぶん良くなった。前日に行くはずだった阿波和紙産業会館に向かうため、山川町までの切符を買う。徳島にはまだ自動改札がない。私は通せんぼするようなあれが苦手だ。
乗って5分ほどで住宅エリアはすぐに抜けてしまう。田んぼや山道の景色を眺めながらの1時間の汽車の旅はなかなか良いものだ。
山川駅は無人駅。汽車の車掌さんがホームに降りて、降りる客の切符を集める。
いつもは歩く道のりだが、タクシーで向かう。
到着。社長さんと会うのも4回目。だんだん話が多くなり、いつも慌ただしいので今回は時間に余裕を持たせてあった。
裏打ち紙の相談をした。
裏打ちした作品を見せると、知らずに使っていた紙が「宇陀紙」という奈良の有名な裏打ち紙だったことを教えていただく。楮紙だが白土を混ぜて漉くことで、紙の縮みを少なくしているそうだが、触っただけでそれを見抜く目に驚いた。
「それ使えばいいん違う?」と商売気のないアドバイス。ありがたいことだ。
奈良か・・・今回は東京の小津和紙で買おう。
裏打ちに黄色の紙を使いたいので、うこんで染めた紙が無いかを聞くと、折しもパリ万博に出展されていた「五色紙」が阿波和紙だったことが分かり目下再現中という。その中の黄色は黄檗だそうだ。そして乾燥中の、黄檗で染めた紙を見せてくれた。鮮やかで深みのある黄色。
次いつ帰ってくるん?その時までに完成させたいなぁ、と。
色々な応援にお応えできるように努めたい。
店員さんにタクシーを呼んでもらうが、駅に着いたのは発車直後だった。
次は1時間後。待合所には中学生らしき少年が一人と、蚊が数匹。
ホームにゆくと秋のオレンジが切り取られていた。